スティーブ・ジョブスの仏教的思考 by Rev. Shigenobu Watanabe
ジョブス氏は生前、仏教に大変な関心があり、日本の禅僧に師事し、結婚式は仏式で行ったという程仏教に傾倒していて、一時は自分のことを「仏教徒である」とも言ったそうです。その彼は、カリフォルニア州のマウンテンビューという小さな町で育ったとのことでした。今はシリコンバレーの一部となっているとのことですが、彼が育った当時は何もないのどかな町だったそうです。 ジョブス氏の名前を出すと、華々しい成功のところしか見えませんが、彼の生い立ちは大変複雑でかわいそうに思えるほどでした。学生時代に彼を身籠もった母の父が結婚に反対し、スティーブは貰い子として普通の家庭で育ったそうです。成人し高い学費を払う大学には入ったものの大して興味のない授業ばかりで、かつ両親が彼が大きくなるまで一生懸命貯めたお金を垂れ流すように使うのが気の毒で一学期目で既に退学を決意、しかしそれには全く後悔はなかったとのこと。それどころか人生でもっともすばらしい決断をしたと思ったそうです。 また、彼は禅僧との出遇いもあって、大変仏教的な考えを持つようになっていったそうです。そのいくつかを紹介します。 その一つは、「少欲知足」を実践していたということ。彼のトレードマークの黒のタートルネックは、日本人デザイナー三宅一生の手によるものでした。また、シンプルでエレガント、おしゃれでかつ美しいデザインを追求し、iMac, iPod, iPhone, iPad等々の消費者が欲しがるすばらしい商品を世に送り出しました。 第二に、「初心」であることの大切さについても語っておられます。ジョブス氏は、「仏教には「初心」(Beginner’s mind)という言葉があるそうです。初心をもっているのは、すばらしいことだ。」と絶賛しています。 第三に、彼は「縁起」について語っています。英語で“Connecting the dots(点と点を繋げる)”と表現していますが、何時かはその人がいろいろと過去にやってきてことが繋がるときがある、これは過去を振り返って初めてわかることであると言っています。 そして第四に、彼は「無常観」についても言及しています。というのは、彼は2005年に、癌を宣告され、死ぬことを肌身で感じた経験があったからでした。その経験を元に、私たちは「何時か死ぬ」と言うことを念頭に置き、それをバネとして生きていくことを語っています。彼の言葉で言うと、「我々は近いうちに皆死ぬのだ、という自覚こそ、人生での大きな決断をするにあたっても最も重要な糧となった。」と語っています。これより、「失敗を恐れない。人の目を気にしない。やりたいことを追求する。」という精神を貫いたのでした。 ジョブス氏の様に、「死」に立ち向かいそれを自分のものとして受け止めることができるとき、自分のゴールに向けてのはっきりした道筋を見つけることができ、やり残しのない人生を送ることができることと信じます。自分の限りあるいのちを精一杯生きるべく充実した毎日を送っていきましょう。